アメリカ株にかかる税金

2019年4月16日火曜日

アメリカ株 税金 米国株

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アメリカ株に発生する税金のお話です。
ちなみに記事中の記述はすべて特定口座(源泉徴収あり)を前提としています。
あちこちのサイトで念入りに調べて書いてますが、間違いがある可能性もゼロではないので、正確な情報は税理士や証券会社への問い合わせなどで把握してください。
また、為替レートの適用については各証券会社で微妙に差異がありますので、ご注意ください。

税金が発生する利益は日本株より1つ多く、譲渡益、配当金、為替差益の3つです。

税金が発生するタイミング

1.譲渡益が発生した時

円換算された譲渡益(円)×20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が証券口座内の円の預り金から源泉徴収されます。源泉徴収されているので、確定申告は不要です。

譲渡益(円)の算出方法は後述します。

2.配当金が発生した時

配当金(税引前、USドル)の場合、現地課税(アメリカ株の場合、10%)が初めに源泉徴収されます。

次に、現地課税が引かれた後の配当金に対して、20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が国内課税で源泉徴収されます。

なお、配当金については、特定口座(源泉徴収あり・なし)、一般口座のいずれでも必ず源泉徴収されます。源泉徴収されているので、確定申告は不要です。

ただし、アメリカ株の場合、日本株のように配当控除を受けることはできませんが、現地課税された分について確定申告を行って外国税額控除を受けることができます。記事が長くなりすぎるので、外国税額控除については後日、別記事で記載します。

3.為替差益が発生した時

アメリカ株に関して、特定口座内で処理されない為替差益が発生するのは次の3つです。アメリカ株の売却時にも為替差益は発生しますが、譲渡益の中に織り込まれているため、特定口座内で処理されます。

1.保有しているUSドルでアメリカ株を購入した時
2.アメリカ株の配当金(USドル)でアメリカ株に再投資した時
3.保有しているUSドルを円に換えた時

これらに関しては源泉徴収されず、特定口座内でも損益通算されませんので、自分で計算して確定申告する必要があります。また、税制上は雑所得として計上されるので、総合課税として処理されます。

ただし、後述しますが、同日内の取引とすることで最終的に譲渡所得として処理することができます。

税金の算出方法

1.譲渡益にかかる税金の算出方法

譲渡益(円)の算出方法は次のとおりです。
譲渡益(円)=譲渡価額(円)-取得費(円)-売却時手数料(円)
この譲渡益(円)に対して次のとおり、国内で課税されて円貨で源泉徴収されます。
所得税(円)=譲渡益(円)×15.315%
住民税(円)=譲渡益(円)×5%
上でも書いたように証券口座内の円の預り金から源泉徴収されるので、口座内には円貨を確保しておきましょう。

さて、譲渡益(円)の算出式の中のそれぞれの項目についてひとつずつ見ていきましょう。

譲渡価額(円)とは

譲渡価額(円)は売却額を円換算したもので、次の式で表されます。
譲渡価額(円)=約定金額(USドル)×為替レート(円/USドル)
この時、適用される為替レートは「売却時の国内約定日のTTB為替レート」です。

取得費(円)とは

取得費(円)は取得単価(円)に売却数量(株数)を掛けたもので、次の式で表されます。
取得費(円)=取得単価(円)×売却数量
では、この取得単価(円)はどこから来ているのかというと、購入時の金額から算出され、次の式で表されます。
購入時の約定金額(円)=
購入時の約定金額(USドル)×為替レート(円/USドル)
取得費(円)=購入時の約定金額(円)+国内手数料(円)+消費税(円)
取得単価(円)=取得費(円)÷購入数量
この時、適用される為替レートは「購入時の国内約定日のTTS為替レート」です。

売却時手数料(円)とは

文字通り売却時の手数料で、次の式で表されます。
売却時手数料(円)=国内手数料(円)+消費税(円)

2.配当金にかかる税金の算出方法

配当金には、現地課税と国内課税がかかります。それぞれについて、どのように課税されるのかを見ていきましょう。

現地課税額の算出方法

アメリカ株の場合、配当金の現地課税は10%ですので、次の式で表されます。
現地課税額(USドル)=配当金(税引前、USドル)×10%
よって、現地課税額を引かれた後の配当金は次の式で表されます。
配当金(現地課税引後、USドル)=
配当金(税引前、USドル)-現地課税額(USドル)

現地課税額の計算例

配当金(税引前)が20USドルの時、現地課税額は20USドル×10%=2USドルです。
現地課税引後の配当金は20USドル-2USドル=18USドルです。

国内課税額の算出方法

配当金(現地課税額引後、USドル)に対して国内課税されますが、いったん円換算してから計算されますので、次の式で表されます。
所得税(円)=配当金(現地課税引後、USドル)×為替レート(円/USドル)×15.315%
住民税(円)=配当金(現地課税引後、USドル)×為替レート(円/USドル)×5%
これを再びUSドルに換算します。
所得税(USドル)=所得税(円)÷為替レート(円/USドル)
住民税(USドル)=住民税(円)÷為替レート(円/USドル)
この時、適用される為替レートは「発行会社が定める支払日のTTB為替レート」です。

よって、最終的に証券口座に振り込まれる配当金(税引後、USドル)は次の式で表されます。
配当金(税引後、USドル)=
配当金(現地課税引後、USドル)-所得税(USドル)-住民税(USドル)

国内課税額の計算例

上の例の続きですが、 現地課税引後の配当金18ドルに対して国内課税されますので、いったん円換算して計算を行います。為替レートは120円/USドルとします。

所得税(円)=18USドル×120円/USドル×15.315%=330.804円≒330円(円未満切捨)
住民税(円)=18USドル×120円/USドル×5%=108円

これをUSドルに換算します。

所得税(USドル)=330円÷120円/USドル=2.75USドル
住民税(USドル)=108円÷120円/USドル=0.9USドル

よって、最終的な税引後の配当金は次のようになります。

配当金(税引後、USドル)=18USドル-2.75USドル-0.9USドル=14.35USドル

3.為替差益にかかる税金の算出方法

いきなり言い訳になりますが、為替差益に関してはおそらく大半の方が自分ルールで計算されておられると思います(下手すると為替差益の知識自体がなくて意図せず脱税してる人もいるでしょう、くわばらくわばら……)。

この記事に書いている計算式も、あくまで「自分ならこう計算する、税務署に対してはこう説明する」というもので、「誰もがこのとおり計算しなければならない」という絶対的なものではありませんので、あらかじめご了承ください。

ちなみに、本項はタイトルが「税金の算出方法」となってますが、為替差益は雑所得で、総合課税として処理されるので、個々人の所得に左右されるため、あくまで為替差益の算出に留まっています。

3-1ー1.保有しているUSドルでアメリカ株を購入した時

この時の為替差益(円)は次の式で表されます。
為替差益(円)=約定金額(USドル)×{アメリカ株を購入した時の為替レート(円/USドル)-保有しているUSドルの平均購入レート(円/USドル)}
この時、適用する為替レートに明確なルールはないと思われますが、その日に円貨で購入したとすれば必要であった為替レート(TTS)で計算するのがよいと思います。

3-1-2.上の式の計算例

為替レートが105円/USドルの時に5,000USドルでアメリカ株を購入した場合を考えます。保有しているUSドルは90円/USドルの時に円貨より換えたものです。

為替差益(円)=5,000USドル×(105円/USドル-90円/USドル)=75,000円

75,000円が為替差益として認識され、雑所得として計上されます。

3-2-1.アメリカ株の配当金(USドル)でアメリカ株に再投資した時

この時の為替差益(円)は次の式で表されます。
為替差益(円)=約定金額(USドル)×{アメリカ株を購入した時の為替レート(円/USドル)-配当金が入金された時の為替レート(円/USドル)}
この時、適用する為替レートもTTSでよいと思います。

3-2-2.上の式の計算例

為替レートが105円/USドルの時に配当金の300USドルでアメリカ株を購入した場合を考えます。配当金のUSドルは100円/USドルの時に入金されたものです。

為替差益(円)=300USドル×(105円/USドル-100円/USドル)=1,500円

1,500円が為替差益として認識され、雑所得として計上されます。

3-3-1.保有しているUSドルを円に換えた時

この時の為替差益(円)は次の式で表されます。
為替差益(円)=交換金額(USドル)×{USドルに交換した時の為替レート(円/USドル)-保有しているUSドルの平均取得レート(円/USドル)}

この時、適用する為替レートはTTBになるはずです。

保有しているUSドルの平均取得レートについて補足します。円からUSドルにドル転した時のUSドルや、アメリカ株を売却したり、配当金を受け取った時のUSドルであれば、その時々の為替レート(TTS)から平均取得レートを算出できます。これを為替差益の根拠として考えます。

3-3-2.上の式の計算例

為替レートが105円/USドルの時に500USドルを円貨に換える場合を考えます。保有しているUSドルの内訳は、

アメリカ株の売却金300USドル(為替レート100円/USドルの時に売却)、
アメリカ株の配当金200USドル(為替レート102円/USドルの時に入金)

とします。

まず、USドルの平均取得レートは次のようになります。

保有しているUSドルの平均取得レート(円/USドル)=
(300USドル×100円/USドル+200USドル×102円/USドル)÷(300USドル+200USドル)=100.8円/USドル

為替差益(円)=500USドル×(105円/USドル-100.8円/USドル)=2,100円

2,100円が為替差益として認識され、雑所得として計上されます。

為替差益を特定口座内で処理したい

どうですか?為替差益の計算なんて誰もやりたくないですよね。

単純にはっきり言ってくそめんどくさい!

しかも雑所得として計上されるせいで総合課税で処理されます。勘弁して。

というわけで、為替差益を自分で計算せずに特定口座内で自動的に処理し、なおかつ譲渡所得として損益通算されるようにするための方法を記載します。

ちなみにこの記事より、後述している参考サイトを見たほうが図解でわかりやすいです。

同日内の取引であれば為替レートは同じ!

確定申告の際に使用する為替レートとして、リアルタイムの為替レートだけではなく、TTSおよびTTBを使うことが日本の税法では認められています(TTSとTTBの意味はググってください)。

TTS、TTBを利用すれば、同日内であれば何時に取引しようが全て同じ為替レートとして計算されます。

この「同日内なら同じ為替レート」ということを利用して、為替差益を別カテゴリに移そうというのが狙いです。

購入・取得したUSドルをUSドルのまま保有しない

為替差益が雑所得として計上されるのは、購入・取得したUSドルをUSドルのまま保有しているせいです。

つまり、購入・取得したUSドルを「同日内に」アメリカ株および外貨建MMFの購入に回せば、購入・取得時の為替レートと同じレートで約定できますので、為替差益は発生しません。

もちろん、アメリカ株および外貨建MMFの売却時に為替差益は発生しますが、譲渡益の中に織り込まれているので、特定口座内で処理されます。

USドルを円転する場合も同じです。購入・取得したUSドルを「同日内に」円転すれば、為替差益は発生しません。

外貨建MMFを利用する意味は?

別に外貨建MMFを利用しなくても「ドル転→同日内にアメリカ株を購入する」だけでいいんやろ?と思いますよね。私は思いました。

でも株の購入時に、保有しているUSドルとピッタリ同じ金額で購入できればいいですが、ほぼ必ず余りのUSドルが出てきますよね。

これをそのまま保有していると為替差益が発生します。なので、余りのUSドルを同日内に外貨建MMFの購入に回すのです。

USドルを円転する場合でも、購入・取得したUSドルをその度に円転していては為替手数料がかさんでしまいます。

では、ということで、しばらく円転する予定のないUSドルについては外貨建MMFの購入に回し、必要になった時に、「外貨建MMFを売却→同日内にアメリカ株の購入または円転」をします。

本当に毎回、同日内にできるのか?

実際問題、アメリカ株の購入時はともかくとして、配当金が入る度に同日内に再投資or外貨建MMFの購入ができるのか?というと無理です。本業があるわけですから。

ということで、配当金については同日内に処理できなかったものについては、その都度、記録して、確定申告が必要であればするしかないかなーと思います。

それでも、全部を全部、為替差益として認識されるよりはマシですし、実際の労力もかなり減ります。

参考にさせて頂いたサイト様

本記事を書くに当たって、特に下記サイト様を参考にさせて頂きました。ありがとうございます。

ルナコの投資ブログ
https://runablog.com/foreign-stock-etf-article-20180511

にわか投資野郎の駄目な日常
https://invest.qbei-cinefun.com/stock-market-lesson/lesson_09/

税理士ドットコム
https://www.zeiri4.com/c_1032/q_18405/

住信SBIネット銀行
https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i060904CT

国税庁
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/43.htm

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